日記
およそ2ヶ月ぶりに実家へ帰省すると、
家は見慣れた様子に散らかされていた。
洗い物が溜まったシンクを見て、
それから僕の部屋の冷蔵庫と同じほどしか
食品の入っていない冷蔵庫を見て、
そして、おそらくこのところ忙しくしているのだろう、
遅くまで帰って来そうにない様子の母のことを考えて、
夕飯を作る準備を始めた。
とはいえ自分で買ったIHでしか料理をしない僕は
火を使う調理は難しいのだと言うことを
黒焦げになったかぼちゃを見て思い知らされた。
結局ご飯を炊いてカレーを作って食べた。
僕は実家にいたときから常々
甘口のカレーのほうがおいしいと主張していたのだが、
家族の誰の同意も得られることはなかった。
こうして僕がキッチンの主導権を握って初めて
僕の実家に甘口のカレーが登場したのだ。
母は微妙な表情でその甘口カレーを食べていた。
たぶん誰にとっても実家は退屈で
手持ち無沙汰になるとお定まりのことだろう。
僕も今朝から、
やろうと思っていたことはいくつかあるのだけど、
それでもなんとなく手癖のように
アプリで男を漁っていた。
半ば冗談でしゃぶらせてくれませんかとメッセージを送った
20歳の大学生から、いいですよと返事が来てしまった。
今から待ち合わせ場所に向かう。
カバンの中から余った甘口カレーのルウと
ローションの蓋がのぞいている。